2015年5月5日火曜日

インスタントコーヒー

 インスタントコーヒーの粒子はタンパク質の膜に蔽われている。その膜を壊さないと、旨みも十分出てこないし、香りも立たない。
 そう知ってから、淹れ方に注意するようになった。 
注意といっても簡単なことで、カップにいきなり湯を満たさずに、まず少量注いで粉をかき混ぜ、濃い溶液をつくる。そうすることで膜を壊すのだ。
 そこに、さらに湯を注ぎ、飲む分量を作る。これで出来上がり。
 やってみると、段違いに旨くなる。こんな程度のことで、と驚かされる。
 個人的な工夫として、湯量を減らすようにもなった。
インスタントコーヒーを作る時は、どうしても湯を多めに注いでしまいがちになる。それを避けるのだ。
カップの半分ほどまで湯を入れ、止める。
たったこれだけのことで、ほとんどエスプレッソなみのコーヒーが作れる。もっと薄くしたければ、ほんのちょっとずつ、湯を加えて調節していけばいい。
少なめに作ってこそ、インスタントコーヒーはそこそこ旨くなる。
もちろん、本当のコーヒーとインスタントでは、どうしても味や飲み心地は違うので、こうしてできたインスタントコーヒーが最上だとは言わない。しかし、ふつうの喫茶店で飲むブレンドよりは、先ず、よほど旨いものができる。

逆に言えば、旨いコーヒーをちゃんと出す店など、本当に少ないということでもある。
人に連れられて、その人のお気に入りの喫茶店に行くことは時々あるが、まずいコーヒーを出されると、失礼ながら、その人の味覚の程度を哀れに思ってしまう。
旨い店は、ただのブレンドでさえ、ちゃんとしたものを出す。
ブレンドという名称は伊達ではない。その店で独自に練り上げた味を意味する。いちばん安い場合が多いが、ブレンドこそ店の特製コーヒーのはずで、その店ならではの味が出ていなくてはならない。煮詰まり出したような味のものを出せば、店の沽券にかかわる。
こんなことをわきまえない店が多いからこそ、偶然入った喫茶店やカフェで、たまに旨いコーヒーに出会うと、素直に嬉しくなる。その街を見直す気になるし、敬意さえ湧いてくる。


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